その人の横顔はまっすぐ遠くを見つめていた。

細く落ち着いた声だった。

歯車のように組み合わされた両手は、しかし、かすかながら震えていた。

ダンテの神曲を語るたび、巻き髪がプルプルと揺れていた。

議論が交わされる。目の前を飛び交う言葉の数々。

右向け、左向けと、まるで他人事のように眺めながら、

言葉よりも映像のほうが脳裏に刻まれていく。

 

私の立ち位置とはなんだろうと考える日々。

適材適所ということばが聞こえてくる。