比嘉光龍(ひが ばいろん)さんから講習会のお知らせ

   大変ご無沙汰しておりました、ANIKOです。
   本日はこのブログをご覧の皆様に、お知らせさせていただきたいことがあります。
   琉球諸語復興に向けて顕著な活動をされている比嘉光龍さんから明日10月29日土曜日に沖縄大学にて行われる講習会についてお知らせを受けましたので、その内容をそのまま添付致します。ご興味のある方はどうぞ足を運んでみてください。また、下記のリンクからオンラインで生放送をご覧になることもできるそうですのでどうぞそちらもご利用下さい。

御総様(ぐすーよー:「皆様」の意味)、比嘉光龍やいびん(です)。何度もBCCにてお知らせを送りすみません。来る土曜日のシンポジウムが沖縄大学側の計らいで、インターネットにてリアルタイムで視聴する事が可能になったというお知らせをさせていただいております。
ご存じのように10月29日(土)午後1時〜3時半に沖縄大学にて琉球諸語の復興を目指して」というシンポジウムを行いますが、そのネットでの配信先のアドレスが、下記の
http://www.ustream.tv/channel/沖縄大学土曜教養講座-琉球諸語の復興を目指して
になっております。
   当日、1時〜3時半に見る事も可能ですし、その後も同じアドレスでしばらくは見る事が可能なようなので、みなさん是非、うちなー以外の他府県のお知り合いや、海外のうちなーんちゅネットワークにお知らせしていただけませんでしょうか?
   琉球の6つの言語が方言ではなく、言語だという事の認識を広めるためにがんばっておりますので、皆さんのお力を貸してもらえませんでしょうか。このメールは転送大歓迎です。
   ゆたさるぐとぅ(よろしく)うにげーさびら(お願いします)。
比嘉光龍(ふぃじゃ ばいろん)
オフィシャルサイト http://fijabyron.com/

   「言語と方言」の違いについて考えるとき、両者を隔てる境界線は社会的あるいは文化的な尺度によって成り立っており、言語学的な定義は実は未だかつて明確にされていません。つまり、何を持って独自の言葉(言語、○○語)とみなし、何を持ってその言語に従属する二次・三次的な言葉(方言)とみなすかの議論は、言語学的視点・基準を持ってはっきり線を引くことができないのが現状です。
   例えば、ラテン語から派生したロマンス諸語は独自の発展を遂げ、フランス語、スペイン語、イタリア語等の言語として今日に至り、それぞれの国の公の言語として認識されています。また、スペインの場合を例に挙げると、カタルーニャ語バスク語は国レベルではないものの自治州レベルの公用語としてスペイン語と同等の地位が認められています。
   しかし、バスク語が独自の言葉として一般的に認識されている一方で、カタルーニャ語スペイン語により「近い」言葉と認識され、中には(今では方言と認識されている)アラゴン地方の言葉から派生したものだと論じる学者もいます。
   「近い」という表現はつまり、「その言葉を知らなくても聞いたり読んだりしてなんとなく意味を捉えられる」という意味で、主観的で曖昧な尺度ですね。文法あるいは語彙的な類似から文章を読んで理解はできたとしても、発音が違うために一度聞いただけでは同じ文章でもまったく意味が捉えられないかもしれません。言語間の「距離」を客観的に科学的方法で計測することは非常に困難で、「近いか遠いか」という主観的な尺度を「言語か方言か」を見分ける際の客観的な物差として適用するには今のところ無理があります。
   つまり、明確な言語学的尺度がないままに、カタルーニャ語が(バスク語よりも)スペイン語に「近い」からという印象をもって前者が後者の方言であるという論理を成立させることができないのと同様に、沖縄の言葉は(中国語よりも)日本語に「近い」からといって日本語の方言であると断定することも、実は言語学的な根拠に基づいていないことになります。
   かつてのロマンス諸語が、俗ラテン語と捉えられていた時代からそれぞれ独自の言語として発展し地位を確立したように、現在「方言」と捉えられている言葉の数々がいつか「言語」として認識されるようになる可能性はいくらでもあるのだと思います。ある言葉が滅亡するか、あるいは復興・普及し「言語」とみなされるようになるかは、その言語の話者の意識と取り組みによって大きく左右されるものではないでしょうか。
   そうした意味で、明日行われる講習会には個人的にとても興味がありますし、ぜひ多くの人に知っていただきたく当ブログに情報転載いたしました。

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後日追記(2012/03/23):
U-Streamで講演会の様子を観覧できます。

Video streaming by Ustream

バイロンさんの司会はユーモアたっぷり気さくな感じが親しみを感じさせてくれます。大御所の方々とのゆんたくぅ(語り合い)する場面など、講演会ではあるものの堅さがなく、一杯飲みながら交わすような味わいのある会話で、懐かしのうちなぁぐち(沖縄の言葉)を時間が経つのも忘れて聞き入ってしまいました。以下はバイロンさんのコメント。

「沖縄口(うちなぁぐち)は、引き出す人がいれば、大先輩方はいくらでも昔のことを語ってくれるんです。ただ、やまとぐち(標準語)だとちょっとね、昔の思い出を日本語で語るということは、一度フィルターを通してしまうから、ダイレクトに自分の思い出とつながらないことがあるんでしょうね。沖縄口で話しかけるって大変なんですよ。私自身沖縄口を学び教えていますが、ある特定の言語で話ができるということはとても大切なことなんですよ。」

幕開き曲の演奏後は簡単な沖縄諸語コーナーがありました。聞き取ってはみたものの、ところどころ耳慣れず。確信のないものにははてなマークをつけておきましたが、果たして当たっているのかどうか・・・。

  1. 「ありがとうございます」は
    • 奄美語で:「ありがたさまりょうた」「おぼこりだりょん」
    • 与論島の国頭語で:「とーとぅがなしぃ」
    • 沖縄口で:「にふぇぇでぇびる」「かふぅしどぉ」
    • 宮古語で:「たんでぃがぁたんでぃ」「ぷからっさぁ」
    • 八重山語で:「みぃふぁいゆぅ」「にぃはいゆぅ」「すりがふゆぅ」「ふこうらさいゆぅ」
    • 与那国語で:「あらあぐふがらさいゆぅ」は
  2. 「やぎの肉はおいしぃなぁ」
    • 沖縄口で:「ふぃいじゃぁ(ん)ししぇえまぁさっさやぁ」
    • 宮古語で:「(?)」
    • 八重山語で:「てびじゃぬしそぉまぁさっさやぁ」(?)
    • 与那国語で:「ひびざぬみぃにまるもんにみるどぅんでぃ」(?)

最後に、観客の方が撮影された映像がいくつかYouTubeに掲載されておりましたので、そちらも以下にリンクしておきます。