ゲバラ日記

大まかにではあるが、最後までざっと目を通した。日記であるから、当時の時代背景、ラテンアメリカの情勢を理解してからの方が分かりやすいだろう。しかし、彼の日記は実に簡潔であり、観察力に長けた人物であることがよく伝わってくる。「何も無い一日」という日も多いが、仲間の動きや今後の見通しなどが端的に記されて、彼の鋭い観察眼や判断力が伺われる。山で潜伏するゲリラ生活で必要な術、与えられた環境の中で生き延びるための術を彼は備え持っていた。まず第一に行動力、第二には仲間からの信頼と彼らへの指示力。これにもまして彼の超人的な努力があるのだろうと、私は密かに期待していたのだが、日記にはそうした個人の努力を印象付けるような記述は無い。いたってシンプルに淡々とゲリラ生活を書き留める冷静さが逆に際立っている。ゲバラの強さというのは、精神の抑揚よりも、長期的な戦略を練りつつ共同体を尊重する態度にあるのかもしれない。