矢田津世子『家庭教師』ゆまに書房

昭和15年1月22日印刷、26日発行。

 梶刈弥生が許婚の宮本驚三との待ち合わせに急いでいく場面から始まる。弥生は中津川家にて末娘絢子の家庭教師として働く。勉強を見る傍ら、亡き母を想い一人こもりがちの邦彦の心を開き、次第に二人は惹かれ合う。驚三は二人が文通していることに腹を立て、弥生を突き放した態度をとる。彼の教え子の姉である麻子と親しそうにするのをみた弥生は悲しみ、動揺し、疑いを持ちはじめる。驚三の利己的な態度に傷つく一方で、邦彦に情熱をぶつけられて心を揺さぶられる。 
 ある日、驚三は敬愛する姉の病死を機に渡満を決意。数ヵ月後驚三が素直に心を語った手紙に心を打たれた弥生も渡満を決意した。満州へ行く船の場面で終わる。

 登場人物の会話に使われている日本語の美しさが非常に印象的であった。