El Castillo de Buen Amor 「良き愛の城」

(以下の文章はカスティーリャ・イ・レオン自治州テレビ局編纂による特集ビデオを主な情報源とし、その他複数のスペイン語サイトをもとに書き記したものです。詳しくは後述のリンクをご参考ください。)

スペインはカスティーリャ・イ・レオン自治州サラマンカ県トパス(Topas)村の、草原とワイン畑の只中に、「良き愛の城(Castillo de Buen Amor)」(エル・カスティージョ・デ・ブエン・アモール)として知られるお城がぽつり、内陸の乾いた太陽の下に干からびつつ、ひっそりと、しかし今も尚華麗さを失わず、そこに佇んでいる。夜露あるいは霜につつまれた明け方の愛の城はといえば、潤いと神秘の愛に抱かれるように、建築から数世紀が経過した今も尚、中世の息吹をそのままに感じさせてくれる、まさに人里離れた憩いの場所である。
もともとは12世紀末から13世紀初頭にかけて220人を収容するほどの軍隊宿営地として建設され、その後、軍事的役割を果たし終えた城砦とその周辺の土地の所有権は、貴族や王族の手を経、現在は私営ホテルとして機能している。
●所有権の移転●
城の所有権はまずGutierre Alvarez de Toledo氏(グティエレ・アルバレス・デ・トレド、1376-1446、後のアルバ公爵一世)によって買い取られた。氏はアルバ・デ・トルメス村の貴族の家に生まれ、カトリック教会パレンシア司教(Obispo de Palencia)及びセビージャ大司教を務めた人物である。後にアルバ公爵はカトリック両王に城砦を寄贈、さらにアロンソ・デ・バレンシア(Alonso de Valencia)氏(フアン・デ・バレンシアJuan de Valencia【生年不明-1412年】の息子でありサモラ市会議員を務めた人物)の所有を経た後、1460年、アロソ・デ・フォンセカ・イ・アセヴェド(Alonso II de Fonseca、生年不明―1512年没、サンティアゴ大司教)によって買取・改築が施されたと言い伝えられた(後述参照)。
1931年、国有財産として登録された当城砦は、1948年にエスペランサ・フェルナンデス・デ・トロコニス婦人によって買い取られ、2000年頃(?)までトロコニス家の第二の住居とされたという。
●「良き愛の城」●
また、「良き愛の城」という通称についても、はじめのうちはアロンソ・デ・フォンセカ司教とその愛人で城砦に随時居住したとされるマリア・デ・ウジョア(Maria de Ulloa)の内縁関係にまつわる、悲しい愛の物語に由来するとされた。
しかし、これまでの歴史調査研究の最終結果、「良き愛の城」という呼称の由来の依拠するところは、実はアロンソ二世ではなく、その従兄弟で同姓同名のアロンソ(・ウジョア)・デフォンセカ・キハーダ氏(Alfonso Ulloa de Fonseca Quijada、生年不明―1505年没)とその愛人の愛の物語にまつわるものであることが分かっている。
キハーダ氏は(カスティーリャ・イ・レオン自治州サラマンカ県アビラ市ならびに同州ソリア県オスマ市及びカスティーリャ・イ・ラマンチャ自治州クエンカ県クエンカ市の司教を務め、サラマンカ県旧ヴィジャヌエバ・デ・カニェド領地(antiguo señorío de Villanueva de Cañedo)の領主としても名高い人物で、生涯の愛人であったテレサ・デ・ラス・クエバス嬢(Doña Teresa de las Cuevas)との間に4人の子(長男グティエレス氏、次男フェルナンド氏、長女アナ嬢、次女イサベル嬢)をもうけた。そのため、二人の関係は内密とはもはや言い難いものではあったが、いずれにせよ中世カトリック教国の辺境で愛人関係を赤裸々に公表することは無論社会的に許されるはずがなく、二人の愛は生涯を通じて城内に閉ざされる運命にあった。
二人の亡骸は現在、サモラ県トロ市のサン・イルデフォンソ修道院に(キハーダ氏の亡骸は主要礼拝堂、テレサ・デ・ラス・クエバス嬢はキハーダ市の母親の遺体と伴に同修道院の別の礼拝堂に)埋葬されているという。

●「良き愛の城」情報サイト及び参考リンク(スペイン語)●

インターネット上の情報サイトはスペイン語で検索にも関わらず案外少ないもので、私自身少し予想外で驚きを覚えております。以下は、中でも有用だと思われるリンクですので、ご興味のある方はどうぞご参照ください。スペイン語サイトではありますが、写真や映像もご覧になれます。

  • emc2 (emociones en salamanca) El Castillo de Buen Amor- habitaciones con derecho a fantasma- por Luis Garcia Jambrina (profesor de la Universidad de Salamanca)

http://www.dipsanet.es/turismo/emociones/emociones14/noticia1.php

上記は、サラマンカ大学文献学部スペイン文学教授であるルイス・アルベルト・ハンブリナ氏による記事へのリンクです。『時を越えて』というモットーを生涯貫いたというキハーダ氏と愛人イサベル嬢の深い愛情は、まさに数世紀の時の経過を経て現在にまで受け継がれているのだという内容の記事で、中世の愛の城を文学的な視点からの眺めるという、貴重かつ読み応えのある記事だと思います。

以下3つのリンクはYouTubeにアップロードされたドキュメンタリー映像で、ミステリー系の焦点から城砦にまつわる不思議な出来事について、城砦の現在の経営者や使用人の方たちのインタビューが記録されています。当ブログ記事は主にこの映像を参照しています。

  • Castillo de Buen Amor Misterioso 1 de 3

http://www.youtube.com/watch?v=b8f95vzqBqA

  • Castillo de Buen Amor Misterioso 2 de 3

http://www.youtube.com/watch?v=MR_9dkJtrHY

  • Castillo de Buen Amor Misterioso 3 de 3

http://www.youtube.com/watch?v=rZexMe35HT8

次のリンクはスペイン国内の城砦についてその歴史や見所を写真を交えて紹介しているサイトです。昔と現在の写真が掲載されている点が非常に興味深く思われます。

  • Castillos de España > Castillo de Buen Amor

http://galeon.com/castsalamanca/buenamor.htm

最後に、Wikipediaから城主であったキハーダ氏のリンクです。

  • Alonso Ulloa de Fonseca Quijada

http://es.wikipedia.org/wiki/Alonso_Ulloa_de_Fonseca_Quijada